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コラム 2021月09月21日

《コラム》国際的な租税回避にデジタル課税の波

 今年7月、OECDでGAFAなど多国籍企業に対する新たなデジタル課税の導入が大枠で合意され、同月、イタリアで開催されたG20においても承認を受けました。合意内容はこれまでの国際租税法の枠組みを超える画期的なものとなっています。

◆課税はローカル、経済はグローバル
 課税権はそれぞれの国が持ち、課税対象、税率などを定めます。国際的な経済活動には2国間で租税条約が締結され国内法に優先します。外国法人は国内源泉所得に課税され、事業所得は国内に有する恒久的施設(PE)に帰属する所得のみに課税されます。
 一方、経済は国家の枠組みを超え、グローバル化、デジタル化が進み、多国籍企業は法人税率の低い国に拠点を構え、日本などサービス消費国にPEをもたずに事業展開することにより租税を回避できます。
 OECDで合意されたデジタル課税は、多国籍企業に新たな課税の仕組みを設け、PEが設置されない消費国においても売上に応じて法人税を課税できるようにするものです。

◆デジタル課税の2つの柱
第1の柱:グローバル収益に課税
 グローバル収益が200億ユーロを超える多国籍企業を対象に、通常利益(税引前利益率を10%として算定)を超える残与利益(10%を超える部分の利益)の20~30%に対する法人税を、PEの有無にかかわらず、サービス消費国の間でそれぞれの売上に応じて按分します。

第2の柱:最低法人税率の導入
 グローバル収益が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業を対象に、最低税率(少なくとも15%)による法人税を課し、子会社等が軽課税国にある場合は、子会社等に帰属する所得を親会社で合算し、最低税率までの上乗せ課税を行い(所得合算ルール)、親会社等が軽課税国にある場合は、子会社等の支払う使用料等は、最低税率の課税に服さない範囲で損金算入を否認する(軽課税支払ルール)など追加納税を課します。

◆法人税率の引下げ競争は終焉か?
 これまで経済のグローバル化の中で企業を自国に誘致すべく租税競争が行われ、世界中で法人税率の引下げが行われてきました。今回のデジタル課税で設定される最低税率は多国籍企業に対するものですが、感染症の影響により世界中で財政支出が増大する中、財源確保のため法人税率の国際的な引下げ競争にも歯止めがかかりそうです。

その他 2021月09月14日

生保協会、保険料控除の引き上げ要望

生命保険協会が2022年度税制改正に関する要望書を発表しました。保険料控除の上限引き上げや、相続財産の評価時に「500万円×法定相続人の数」まで認められている生命保険金の非課税枠の拡大など、保険に関わるさまざまな税制の拡充を求めています。

重点項目として挙げたのは、支払った保険料の一部が所得控除される「保険料控除」の拡大です。生命保険、介護医療保険、個人年金保険に払い込んだ保険料は、所得税と住民税が一定額まで控除されます。限度額は、2011年までの契約では所得税10万円、住民税7万円、12年以降の契約では所得税12万円、住民税7万円となっています。要望書では、「人生100年時代を迎え、少子高齢化の急速な進展や働き方・ライフスタイルの多様化など社会環境が変化する中、持続可能な社会保障制度の確立と国民生活の安定に資するため」として、生命保険、介護医療保険、個人年金保険それぞれの所得控除額の上限を現行の4万円から5万円に引き上げ、それに伴い合計の控除額も12万円から15万円へ引き上げるよう求めました。住民税についても、合計の上限7万円は据え置きとした上で、各保険の控除上限額を2.8万円から3.5万円に拡充するよう要望しました。もっとも同協会は同じ内容の要望を毎年挙げていて、その内容に大きな変化はありません。

他には、生命保険金の相続非課税枠についても控除上限額の引き上げを訴えました。相続税には、「3千万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額とは別に、死亡保険金に「500万円×法定相続人の数」の控除枠が設けられています。要望書では、遺族の生活資金の確保のために、現行の控除枠に加えて新たに「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人の数×500万円」の控除額を設けるよう求めました。今ある非課税枠だけでは生活資金を賄いきれていないケースが多いとして、「遺族の生活資金まで課税の対象とされることのないようにすべき」としています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2021月09月14日

《コラム》相続で所有者不明土地にしないために

 高齢化で相続が増加する中、利用されない土地が増えると、所有者が判明しない、又は連絡がつかない所有者不明土地が生じます。今年4月、これらの解消を目的とした民事基本法制の見直しが行われました。

1.不動産登記制度の見直し
 相続登記が義務化され、不動産を相続により取得した者は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料が徴収されます。一方、相続登記はこれまで、登記義務者が共同して申請しなければなりませんでしたが、新たに相続人が自らを登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、単独で登記申請できる「相続人申告登記」※が新設され、登記申請義務を履行したものとみなされます。また、令和4年の税制改正では、相続人の登録免許税の負担軽減措置が図られる見込みです。(※所有権の移転登記ではなく、報告的な登記とされます)

2.相続土地国庫帰属制度の創設
 相続した土地を国が買い取る制度も新設されました。相続人にとっては朗報ですが、国は、安易な買取りを防ぐ観点から様々な条件をつけてハードルを高くしています。建物は相続人が取り壊して更地にすることや、土壌汚染や埋設物のある土地、崖地、担保権の設定された土地、通路に利用される土地、境界に争いのある土地などは、買取りの対象からはずされ、買い取る場合でも10年分の管理費用を国に支払うことが条件となるなど利用し難さが指摘されています。

3.土地利用に関連する民法の見直し
 民法も新制度の後押しをします。遺産分割協議の長期未了状態を解消するため、相続開始から10年経過したときは、特別受益者の相続分や寄与分によらず、画一的な法定相続分で遺産分割することとなりました。
 また所有者不明土地の利活用を促進する観点から新たな管理制度が創設され、選任された管理人が当該土地の管理や売却をできるようにしたほか、所有者不明土地を電気・ガス・水道などライフラインの確保に利用できるようになりました。

◆相続で所有者不明土地にしないために
 親世帯と同居することが少なくなり、相続が起きると土地や建物の利用目的が失われ、維持コストの負担も重くなります。行き場のない不動産としないためにも親の世代が将来の活用や処分に責任をもって臨むことが必要な時代になったと言えそうです。

税務トピックス 2021月09月7日

最賃、過去最大の28円引き上げ

 厚生労働相の諮問機関「中央最低賃金審議会」が2021年度の地域別最低賃金について、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を厚労相に答申しました。引き上げ幅は過去最大。経営者側は新型コロナウイルス感染拡大による経済状態悪化を理由に抵抗しましたが、政府方針を背景に引き上げで決着しました。
 新たな最低賃金は10月ごろから適用されます。時給換算で現行の全国平均902円は930円となる予定です。

 政府は16年度以降、経済再生のため早期に全国加重平均で1000円を目指すとし、19年度まで4年連続で3%以上(20円台)の引き上げが行われました。しかし20年度は新型コロナの感染拡大による企業業績悪化を背景に審議会は目安を示さず、0.1%(1円)の引き上げにとどまっていました。

 今回の引き上げには菅義偉首相の強い意思が反映された形です。コロナ禍で非正規労働者や医療など生活に不可欠なエッセンシャルワーカーの低待遇に注目が集まったことに加え、政府は地方移住を推し進める観点からも、賃金水準を底上げして地域経済を活性化させる必要性を強調してきました。

 6月に閣議決定した「骨太の方針」にも「早期に全国加重平均1000円」が盛り込まれています。衆院選を前にした今年は特に、庶民の生活底上げをアピールしたいという意識も見え隠れするといえそうです。

 一方、コロナ禍の影響でサービス業を中心に経営環境は厳しい状況です。特に中小企業にとっては人件費の増加は負担ともなります。こうしたことから日本商工会議所の三村明夫会頭は「先が見通せない中、大幅な引き上げは到底納得できない。多くの経営者の心が折れ、廃業がさらに増加し、雇用に深刻な影響が出ることを懸念する」とのコメントを発表しています。

<情報提供:エヌピー通信社>

コラム 2021月09月7日

《コラム》雇用保険料の引き上げ 雇調金増、財源が不足

◆雇用調整助成金の大幅増加

新型コロナウイルス感染拡大で休業を余儀なくされた企業の申請で、雇用調整助成金の給付が増えました。雇用調整助成金は企業が従業員に払う休業手当の費用を補助する制度で、仕事が減っても働く人を解雇せず、雇用を維持してもらうのが狙いです。
元々1人当たりの日額上限は8,300円でしたが、特例措置として今は売上げが大きく減少している企業には最大15,000円、助成率10分の10、原則としては13,500円、助成率最大10分の9となっています。
新型コロナの影響による支給決定額は20年3月~21年7月時点の累計で4兆円を超えています。リーマン・ショックの後も約6億5千億円で、今は6倍を超えています。失業率は抑えられた面もありますが、雇用保険料の財源はひっ迫してきています。

 

◆雇用保険料の財源

雇用保険は仕事を失った人のため、生活に困窮しないように給付するものと雇用安定・能力開発の2つに分かれています。企業からの保険料収入を財源にして、給付後の余剰は毎年積み立ています。ただこの度のコロナウイルス感染症で雇用安定事業の雇調金の給付が一気に拡大しました。
国の一般会計からの繰り入れ、失業者向け事業の方からの借り入れで賄っています。コロナ前に4兆5,000億円あった積立金が21年度には1,700億円になる見通しです。

 

◆厚労省が雇用保険料を上げる検討

積立金は16年以降保険料率を下げていましたが、余裕がなくなったため来年度は雇用保険料を上げる模様です。
失業者向け事業は労使で本来1.2%負担のところを0.6%で運用してきました。これをもし本来の料率に戻すと財源は1兆円規模で増加します。ただ被保険者が2倍の保険料徴収、企業も失業者向け部分の保険料が2倍となると負担は多大です。また、あまり意識したことはないと思いますが、雇用安定事業は事業主のみが負担していて、経団連等は国の一般会計からの拡充を求めています。
コロナ下で雇調金が雇用維持に一定の効果があったことは確かですが、休業手当の補助のため、人手不足企業などへの人材移動を阻む面があると言われています。

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